読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

私地獄

twitter:@ataso00

あの部長わたしが簡易書留で退職届を郵送したらどんな顔するだろう  

※今回は、記事供養のための投稿です。

f:id:ataso01:20170124192943j:image

「退職願が受理されない場合、簡易書留で退職届を郵送すれば、2週間で退職することができる」という情報を知ったのは、お昼休み中どうしても居場所を見つけることが出来ず、女子トイレの一番奥の個室で「会社 辞めたい」「退職届 退職願 違い」「円満退職 方法」などのキーワードでiPhoneで検索し、就職・転職に関する様々なページを憂鬱な気持ちで閲覧しているときでした。

勇気をもって、部長へ退職の意志を伝えるものの対応してもらえず、私は覚悟を決めて書類書留で退職届を出しました。まあ、酷い辞め方ですよね。今回は、その時のお話。

因みにタイトルは、岡村靖幸の「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」のパロディーです。 


岡村靖幸 あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう

 

■日々、積もりゆく退社への思い

「会社を辞めたい」そう思うようになったのは、入社して3日目の朝でした。新卒で働くことを辞めて海外を9ヶ月ほど放浪し、「さあ、働くぞ」という思いを胸に就職活動をはじめ、ようやっと見つけた会社の朝礼で部長が社員に向かって灰皿を投げつけている。そんな非日常的な場面に遭遇してしまった時、人は咄嗟に逃げることを選ぶらしい。

私が入社した会社は、凄まじくブラック企業でした。そりゃ、大した資格も能力もなく、フラフラと遊んでいた人間を採用してくれるような会社です。多少の重労働は分かっているつもりでした。
ある程度の覚悟を決めて入社したものの、私の思い描く会社像とはかけ離れ、そして次第に追い詰められていくことになるのです。


サービス残業、終電帰宅は当たり前。社会の一員として働くことは無給でも素晴らしいこと。大切なのは人間関係。だから人は助け合い、自分の能力を高めるためにも無給でも仕事をしなければならない。上司からの教えを要約すると、とんでもない会社であったことがよく分かります。
毎朝、就業時間よりも1時間早く出社し、男子トイレの掃除をする。隣を見ると、先輩の女性社員は素手で便器の掃除をしていた記憶が鮮明に蘇ります。
他の社員と馴染むことが出来ず、お弁当をひとりぽつんと食べている私に、「お昼休みに他の社員とコミュニケーションをとるのも仕事の一環。他の人と一緒の昼食を取らないと駄目だよ」と、注意されたことも懐かしく感じられますね。
社長や他部署の社員が女性社員に向かって「お前はケツが大きいから安産だ。」「女は結婚して、子どもを産んで、専業主婦になるのが一番の幸せなんだ。」と言っているところを発言しているところに出くわしたこともあります。笑う先輩女性社員。隣で、苦笑いをするしかない私。


自分の中の「当たり前」がガラガラと崩れていくものの「普通の会社はこうなのかもしれない」「もし今辞めてしまったら、転職活動に苦労するかもしれない。こんな私を採用してくれる会社なんて他にないかもしれない」という考えが脳裏をかすめ、なんとか毎日を過ごしていたのでした。そう。それは、彼氏によるDVに怯えつつも、どうしても別れることができない女の心理そのもの。あの頃の私はブラック企業をどうしても辞められない社畜だったのです。

■「辞めたい」退職届の日付を更新し続ける毎日

出社して掃除を終えたあと日報を書くことが、一日の始まりでした。その時、事前に作っておいた退職届の日付を毎日更新し、上書き保存をする。自分の退社の意志も同時に上書きされるような気分。「いつでも辞められる」一瞬でもそう思えると、もう少しだけ頑張れそうな気がするのでした。

退職を決意したのは、何か大きな転機があった訳ではありません。あり得ない出来事が起こる度に、少しずつ、少しずつ私の中で色々な思いが蓄積されていき、「このまま働いていては私がダメになってしまう。逃げなければ。会社に、社会に殺されてしまう」そう思い立った時でした。限界。もう、限界だったのです。

出社前には必ず頭痛がし、気分が悪くなる。「全てが嫌になった時、このまま電車を乗り継いで成田空港へと向かい、飛行機に乗って海外へ行けるように」そう考えて、パスポートをカバンの中に忍ばせた時期もありました。
日曜日の夜は、月曜日から始まる日々を想像しては泣きそうになります。実際に泣いたこともありました。この月曜日が憂鬱になる現象には「サザエさん症候群」という名前が付いているらしいのですが、そんなに可愛いもんじゃない。誰だ、そんなファンシーな名前をつけやがった奴は。波平もマスオも、めちゃくちゃホワイト企業勤めじゃないか。

 

■認められない、退職の意志

「部長。相談したいことがあるので、少々お時間をいただいてもよろしいでしょうか?」意を決し伝えたのは、まだ車道の端に雪が残るほど寒い日の朝。他の社員に悟られぬよう、そしてネットで熟読した退職に関するマナーも完璧に覚え、喉元から絞り出すように、その言葉を発したのでした。

相手は、社員に灰皿を投げる男。怒鳴りながら、ごみ箱を蹴っているところも見たことがあります。ふと、「恐怖」という文字が頭に浮かびます。しかし、女には戦わなければならない時があるんだ!

緊張しつつ、退職の意図を伝えながら退職届を渡すも、あっさり「そうか。でも残念だな。お前、頑張っていたのにな」と言う部長。ああ、努力は認めてくれるのですね。

そして「思ったよりも仕事が大変だった」「社員のセクハラが耐えられない」など、それらしい退職理由を並べる私。このまま、辞めることができる。まだまだ入社したばかりの私に任されている仕事はそれほど大きいものではなく、自然に辞めることができると思っていました。

しかし、「でもまあ、もう少し頑張れよ」と伝えられ、突き返される退職届。


辞められないのか……しかし、もう無理でした。本当に本当に、限界だったのです。

 

■私の味方は、労働基準法

退職の意志を伝えたのは、金曜日。その日も、夜10時半くらいまで残業し、帰りの電車で土日も開いている郵便局を検索します。頭の中には、「会社を辞めたい」という、思いだけ。

土曜日の午後。自宅にて日付を更新した退職届を印刷し、印鑑を押す。そして封筒に入れ、丁寧に会社の名前を書く。目指すは、横浜中央郵便局。中に入ると、長い行列ができていたけれど、すぐに自分の番が来、あっけなく「簡易書留」の印が押され、受理される私の退職届。
(追記:おじさん曰く「内容証明はやってない」とのこと)


ありがとう、郵便局。ありがとう、法律。ありがとう、受理してくれたおじさん。ありがとう、日本!社会!空よ、海よ、母なる大地よ!!!私は、あなた達のお蔭で退職することができるみたいです。顔は自然とほころび、心は晴れ渡るよう。とてもすがすがしい気持ちで、郵便局を後にしたのでした。
 

■悲劇!怒鳴る部長

「おい、これなんだよ!!!」私が働く2階のフロアで、部長の怒鳴り声が響き渡ります。私の机には3日前に郵送したはずの茶封筒が置かれます。

遂に来ました。この時が。

「すみません。部屋を変えてお話しをさせていただいてよろしいでしょうか?」焦りに焦って、口から出た言葉がこれでした。

その後、会議室に移動し、不機嫌そうにタバコをふかす部長と、最後の戦が始まります。
私は、どうしても辞めたかった。もう本当に本当に無理でした。「ここで辞めたら、こいつらに負けることになる。逃げたことになる。どうせなら、力を見せつけてから辞めたい。」そう考えていた時期もありました。でも、もういいんです。どうしても辞めたいんです。私は自由になるんだ!!!!!

「俺らがお前に何かしたのかよ?」「一体何がしたいんだ」「ここで働けないのなら、お前はどこにいっても駄目だぞ」と、色々なことを言われるも、ヘリ下りながら応対していきます。「早くここから立ち去りたい」の一心で。「任されている仕事がひと段落ついてから仕事を辞めたい」と言いつつも、1日でも早く辞めたかったのです。

「もう今日で辞めろ。やる気のない奴と一緒に仕事したくねえ」という言葉が部長の口から出た時は、その場で思わずガッツポーズをしそうになります。笑ってしまいそうにもなります。


その後、退職の手続きです。流石、ブラック企業。本来の会社であれば保険証や社員証などがあるはずですが、私が返却しなければならないものは何もありません。弊社に適用されている法律は、どうやら存在みたい。ここ、日本かな?書かなければならない書類も特にありません。因みに、入社時に書いた書類も特にありませんでした。

席に戻り、「ああ、このまま時間が経てば辞められるんだあ」とワクワクしながら仕事をしていると、チーフが私に近づき「みんなに何も言わず、普通に挨拶して出ていってね」と耳打ちをします。なるほど。先駆者たちは皆、こうして逃げていったのですね。私の会社では、いきなり社員が来なくなり、「あいつは辞めた。仕事から逃げる最低な奴だ。」と説明されることがよくあったのですが、皆さんこうして退社していったのですね。

定時まで仕事をし、「お先に失礼します」と普段と同じように挨拶をしつつ、早足で出口まで急ぎます。タイムカードを押し、重いドアを開け、遂に私は奴隷から解放されたのでした。

そのまま、電車に滑り込み、ありったけのビールとつまみを買い漁り、無職になった瞬間に飲むお酒は本当に美味しいものでした。
その次の日には、仕事終わりの友人たちにお酒を奢っていただきます。人のお金で飲むお酒も本当に美味しいのです。

今考えると、出社せずに退職届だけ郵送にすればよかったのでは?と思いますが、まあ過去の話なので、どうでもいいわ

 

■仕事を辞めるということ

あまりない形で仕事を辞めてしまい、次の就職先が見つかるか、心底不安でした。しかし、現在はホワイトな企業で毎日お菓子を食べながらぬくぬくと仕事をしています。

ブラック企業を初めて働く会社として選んでしまうと、そこで培った知識や経験が全て「普通のこと」として認識してしまいます。「あれ?何かがおかしい」と直感で思うのなら、それはもうすぐに辞めるべきだし、どんなことを言われているとしても、もう2度と合わない人間です。「仕事を辞める」という選択は間違いではなかったと今になって、しみじみと思います。

仕事を辞めることは、マイナスだと考えられがちですし、確かにそうなんでしょうけど、就職する会社がどんな会社でどのような働き方ができるのか、は入社してからしばらくしないと分からないです。大きな決断ですが、時には勇気をもって、自分の生活を変えることも大切だなあ、なんて考えるのでした。

 

あと、無職は次の日のことを何も考えなくていいし、ご飯も美味しいし、沢山眠れるし、周りの友人も無職であることを知っているので昼から飲みに誘ってくれるし、「お金ないでしょ?」といいつつ奢ってくれるし、本当に最高です!!!不安要素は「将来が心配」これだけ。貯蓄のある無職になりたい!!!