私地獄

twitter:@ataso00

黄色い服を買った

昔から私が身に纏う色というのは決まっていて、黒、白、青、緑、紫、背伸びして赤とか、まあ、それくらい。クローゼットの中に並ぶ色は大体地味だ。

自分のスタイルや性格、信念には似合う服・似合わない服がある。
私は、「女性らしい」という概念に、絶対入らない色の服ばかり選ぶ。ピンクやパステルカラーなんて絶対に駄目。最悪だ。私の中でのルールを破っているような気持ちになるし、第一似合わない。そんな女性らしい色を欲しがるなんて!と恥すら感じる。欲しいと思ったこともないし、できるだけ関わらないようにしている気がする。可愛いだけじゃだめなんだ。ちゃんと自分に合ったものを選ばなければいけない。

更に、私の顔は地味で個性がない。我ながら、面白みに欠ける顔をしていると思う。可愛げも一切ない。だから、地味な服を重ねるよりも、少し派手な柄の入った服を着こなしていた方がかちっと決まる。黒髪だし。元々気も強いから、服装で自分らしさが表現できているというか。昔からの友達には「なんなの?その服……。」と言われるんだけど。

それで先日、黄色くて、ピンクと青色の大きな花柄が入ったカーディガンを購入した。インド産の生地を使っているらしい。使い回しもさほどできないだろうし、もう夏も終わりなのに、夏用の羽織りものが1万2千円かあ~……着ない割に少し高いような……しかもこれ、手洗いじゃないか?色落ちもしそうだよなあ……なんて思った矢先にすぐ買った。カードで一括。カードで支払うと、毎回「大人って最高!」と思ってしまう。

この服を手に取った瞬間から購入までの間に、自分の中でほんの少しの葛藤があった。だって、私の中のルールには「黄色い服は避けるように」という一文があったから。
黄色、ないない。絶対ない!だって目立つじゃない。漫画やアニメの中だって、活発で可愛い女の子に似合う色じゃないか!明るくて、着ている人の顔が華やぐ黄色。残念ながら、私は華やぐような顔をしていない。同じような理由で、オレンジも避けていた。なんとなく私の性格や性質には合わない。テーマカラーとして、自分の人生にほど遠い色だと思っていた。

でも、手に取ると生地がサラサラしていて、どうしても欲しくなってしまった。迷いとか自分のどうでもいいこだわりを捨て、「買うなら今しかない!」と思って、すぐレジに向かう。学校の先生に内緒でピアスを開けるとか、不良の先輩に誘われて屋上でこっそりタバコを吸うとか、ルールを破るドキドキと同じような感情を抱えながら、買う。


私は、黄色い服なんて欲しくないし、自分の生きている世界には、私に似合う黄色い服なんて存在しないと思い込んでいた。そして、明るくて(かつ女性らしい)色や服に対して、少しの劣等感を覚えていた。だって似合わないから。

年を取ると図々しくなり、人の目が気にならなくなる。周りの人が私と同じように自分のことで精いっぱいで、案外周囲に気を回したりしていないことが分かってくる。別に私が何色の服を着ようが、気にする人なんて本当は存在しないんだよね。自分が気にしいで、「もしかしたら」の不安ばかり考えてしまうだけで。

そういう老化による図々しさもあるかもしれないけど、黄色い服を自ら欲しがる日が来るだなんて思ってもみなかった。ほんの少しの選択で、劣等感は消えるし、ちょっとだけ自分の在り方を肯定してもいいような気さえしてくる。自分の中の制限をなくして、可能性を広げることが出来る。ただ、黄色い服を買ったってだけの話ではあるんだけど……。

 

数日後、誰にも会う予定はないのに、早速ホステスオールナイターに着ていった。

好きな音楽が演奏され、私の身体の動きに合わせて、黄色の生地に浮かんだピンクと青色の大きな花がサラサラと揺れている。それだけで、私は幸せだった。馬鹿だよなあ。