私地獄

twitter:@ataso00

さっき退職した

私の席の左隣では、「ッターーーン!!!」とエンターキーを押す力の強い同僚が今日も元気よく仕事をしてくれている。右隣りでは、上司がクチャクチャと音を立てて何かを頬張りながら仕事をしている。そして、少し離れた席に座っている私よりもずっと年上だけれど後輩という厄介な立場の人は、マスカットをプラスチックの包装を破いた状態でもさもさ食べながら仕事をしている。動物園みたいだ。少し前の私でだったら耐えられなかっただろうな、と思う。

私は今日、会社を辞めることになっている。だから全然平気だ。我慢できる。残りの数時間をなんとかやり過ごせば、もう二度と会うこともないだろう。仮に、道端でばったり出会ってしまったとしても、適当な世間話をして、数分間やり過ごせばいい。今勤めている会社での人間関係なんて、結局そんなものだった。自覚はあったが、やっぱり私は人の集まりがあまり得意ではないみたいだ。改めて思う。

 

昔から、周囲の人に「決断力が早いよね」と言われてきた。例えば、レストランに入ってメニューを決める時とか購入する一眼レフカメラを決める時とか、適当に決めてしまう。私は、大抵のことはどんな選択肢を選んだとしてもほとんど変わらないと思っている。どこで何をしていたって、結局なんともならない。人間の能力なんて決まっているんだから、どう転がったとしても結局は同じだ。あとは、自分に用意された条件をどのように満足できるものにしていくか、それだけだと思う。

その考えに則って、受験とか就職とか、人生における大切っぽいことも、直感とノリみたいな根拠のないもので決めてきたけれど、全てを後悔したことなんて一度もなかった。そして、人生の分かれ道を選ぶような重要なことこそ、誰にも相談せずに一人で考えて、さっと決める。

失敗した!とか、間違えた!と思うことがあっても、その失敗して間違えた中で最善策を選んでいけば、どうにでもなる気がしている。なんというか、人間関係に関しては悩んでもしょうがないことで何日も悩む癖に、自分に関しては変に楽観主義なところがあって、ほとんど悩んだことがない。自分のことで悩むのが面倒臭い。どうだってよかった。誰にも迷惑をかけないし。

だから、今回の退職や転職も、それほど悩んでいない。まあよかったかな、と思っている。

 

新しい就職先から内定をいただき、いつ頃上司に伝えようかほんの少し迷ったこともあった。けど、どうせいつかは言わなければならないと思って、9月の中旬くらいにやっと社長に退職の意思を伝えた。言ってしまえば簡単に承諾してもらい、すぐに手続きを済ませる。それから、10月末まで在職し、有給消化のために明日からお休みをもらう。辞める当日まで実感がなく、なんとなくの日々があっさりと終わっていく。

 

会議室にて、退職理由を聞かれる。「この前、お話させていただいた件がきっかけで、この会社で働くことを悩むようになって……」とそれらしい理由を並べてみたけど、本当は辞める気満々だった。作成済みの退職届にも「一身上の都合」と書いたけれど、そんなものも建前だ。パソコンのキーボードを叩きながら、毎日仕事に対してモヤモヤする気持ちを抱えていた。しばらく経っても何も改善されず、徐々にモヤモヤが膨らんでいった。

もう仕事に対して面白さを感じなくなってしまったこと、これ以上ここにいても私には何もメリットがないこと、絶対に成功しないと分かっているのに上司に指示されて何度も何度も同じミスをしなければいけないこと、事業が今後成功し続ける理由が見当たらないこと、耳を疑うような発言が職場内でよく飛び交うことが実際のところは大きな理由だったりする。

耳を疑う発言というのは、クライアントに対して「死ね」「こいつ頭おかしい」と言うとか、消防士が「仕事がないから火事になって欲しい」というような発言をするとか。

この前、社長に付きまとわれて困っているという話をした時もそうだ。「ストーカ? それ、本当なの? 勘違いじゃないの?」と鼻で笑いながら言われた時、私自身も女性も男性である自分より遥か下の存在として見なしているのだと思った。世間は男女平等だから一応その流れには応じてはいるけれど、根本では侮蔑の対象として見ているんだな、ということをたった一言から感じ取った。

 

これといった決定打はなくて、だんだんと積もったもの、これから積もっていって八方塞がりになって動けなくなるであろう将来を考えて、ふと「転職しなきゃマズいよな」と思って、行動に移した。

何か一つだけだったら我慢できたのかもしれないし、こんなこと誰かに話したところで、転職する理由には欠ける気がする。もっと大変な人がいるのはよくわかっている。でも、私が今まで見てきた退職者のほとんどは1年ちょっとでみんなこの会社を去っていく。多分、私が感じたものと同じような理由なんだろうと思う。

 

新しい職場は、元々私が今の仕事をしていく上でとても理想的なものを作っているところで、日頃からよく参考にしていた。「この会社で働きたい!」と思ったことはなかったし、今の自分では力量不足だろうとも考えていた。しかし、色々な縁があるなかで、人事の方に声を掛けていただき、11月から働くことになった。面接2回と、食事会と、レクチャーと、上層部へのプレゼンか。今までと比べてやたらと内定までの道のりが長かったけれど、こんな決まり方もあるのかとちょっと驚いている。不思議なもんだ。

今の職場で働いてみて、仕事内容とか環境とか、色々な面で自分の適合みたいなものが見えてきたから、より良い職場を選んだつもり。

それに、待遇もよくなった。外資系ではないけれど、とても実力主義な会社で、給与改定も半期に2度ほどある。今後きちんと結果を出せばどんどんお金ももらえるらしい。もしかしたら、海外で働けるかもしれない。私は多分結婚ができなくて、この先も一人でいる可能性が高い。なんとなく将来を考えてみると、そろそろ自立した生活をした方がよさそうだと思っていた。ちょうどよかった。

 

ちょこちょこ転職活動をはじめて、疲れたら辞め、また再開して、というのを繰り返していて、何社も落ちた。やる気もなかったから、不合格の通知が来る度に「そりゃあ、そうだよね」と思っていた。

でも決まった後に思い返してみると、自分のやりたいこと、できること、仕事をする上で譲れない条件、タイミング……色々なことが最も良い形で転職先を決められた気がする。不安なのは、男性が多い職場だということくらいか。男性と仕事をしていると、大体衝突するし、上手くいった試しがないので。でも。頑張りたい。友達数人には「私が次の会社をすぐに辞めたら、暖かい国に行こうよ」と冗談のひとつとして話しているけれど、実現しない方がいいかな。

 

1週間くらい、引継ぎの期間をもらっている。私は今一人で行っている案件をいくつか抱えているのだけれど、私以外に出来る人がいないのでほぼ全ての案件を終了するそうだ。そのため、引継ぎもほとんどない。普通の企業からすると大問題なんだろうけど、ここに関しては今まで新しい人間を雇わず、育ててこなかった会社側の責任だ。私は何も悪くないぞ!

他社員と共同で行っている業務に関しては「私がいなくてもよくないか?」くらいに思っている。そう。あまりやることがなかった。

 

そして、退職の意思を告げた日から、会議には呼ばれなくなり、感覚的に振られる仕事も少なくなった。なんとなく、よそよそしい感じすらする。もしかしたら、気が付いていないだけで、あまりよく思われていなかったのかもしれない。ああ、辞めてよかったんだな、と心底思う。

 

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